キッチンに漂う残り香でカレーが食べたくなる。
レシピがパラパラと捲られ、食材探しが始まり、スパイスを絞っていく。
毎日のようにカレーを作っている。
お店で提供しているカレーや、賄いご飯だったり、または夜食だったりと飽きもせずにおかげで手早く作れるようになった。
かといって安心しているわけではなく、もう少しこうなれば良いなと朧なものを追いかけているから至って落ち着かないことばかり。しかし割と面倒になった時にこそ新しいレシピが生まれてくるものだ。あれもこれもとスパイスをどんどん混ぜて、グツグツ煮込んでしまえばカレーになってしまうところがあって、そう書けば怒られてしまうかもだけど、カレーはそういう懐の深さはあると思う。煮込めば良いってものじゃないし、たくさんのスパイスを使えばオリジナリティになる訳じゃないと考えている。
例えば限られた食材や環境の中で知恵を絞って生まれた郷土料理的なレシピが欲しい。
そういうものが世界のあちこちや日本各地にはまだまだある。自分のカレーを作りたいという想いがここ最近なんだかじわじわと押し寄せてくるのだ。全くコーヒーや写真と一緒になってきた。そういう風に見えてくればこっちのものだと、色々とやってみるが未だまだまだだ。
ただ、指標にしているものの1つに「残り香」がある。
単純にキッチンに漂う残り香が好ましい時には何か良いことをした気分になる。そういう時はノートに手順を書き綴っておく。残り香は何かしらのサインに満ちている気がする。「残り香」という言葉の響きには、切なさを感じずにはいられないが、それは人間にとってとても感情を擽ぐるものかも知れない。
何かの残像か、残響か、残ってなおその存在の名残を教えてくれるのはどこか神秘的だね。
それではまた。