1. DIARY
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雨上がりの午後

カップの中にはコロンビアがなみなみと注がれている。
私にはまだ熱いからしばらく放置して、ちょうど良い温度になったら口にしようと楽しみにしていた。

風が強く吹きつけてきて雷が鳴り始めるとすぐに大粒の雨が激しく降ってきた。子猫のピノは驚いた様子で物陰に走っていってしばらく出てこなかった。強い雨音が室内に降ってくるようで初めは煩すぎたが、そのまましばらく聞き入ってしまった。そして先月四国で買った「美生柑(みうかん)」の皮を剥き、四国でのことを思い出しながらゆっくりと食べた。香りと味わいはグレープフルーツによく似ていて、それよりも甘く、苦味が弱く、皮も薄いので口の中いっぱいに果汁が広がっていく。

あまりに美味しいのもう1つ食べようかと思ったところで、どら焼きがあったことを思い出した。

ここ近年は「どら焼き」や「かりんとう」が好きでよく見つけては食べている。どら焼きは色々なところで食べた。取材先の車中や旅先の道端など、たまにバッグに1個は忍ばせていたりすることもある。

不意に訪れる些細な幸せのように、どら焼きは様々な景色を蘇らせてくれるのだから全く摩訶不思議な食べ物だと愛おしく思う。通りでドラえもんも好きなわけだ。納得。

「美生柑(みうかん)」のあとに「どら焼き」なので食べる順番はバッチリだったが、これが逆であれば美生柑のイメージもここまで良くなかっただろう。食べる順序ってやっぱりあるもんだと色々と想像を巡らした。学生の頃、安いステーキ屋さんでステーキを頼んだ際にアイスクリームを続けて頼んだ時、先にアイスクリームが配膳された時は絶句した。そんなことまで思い出していた。

ところで、カップの中のコロンビアはどうなったのか?と記憶力のいい人もいるかも知れないが、ここまで思い出に浸っているとすっかり冷めているもんだよ。そんな贅沢な定休日の午後だった。

雨音はいつの間にか消え去り、湿気の含む空気が漂ってた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

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