心を掴むバリスタ

  1. COFFEE
  2. 208 view

終日気温が低い日だった。
どこからともなく蟻の行列がやってくる。朝は見当たらなかったのだがお昼を過ぎると急に増え始めた。困る。甘いものを求めて旅に出てきたのか、そう考えると浪漫溢れるが、やはり困る。

国内やコーヒー豆生産地へ訪ねた折、色々な国や街でコーヒーを飲みに出かけた。その度に素敵なバリスタやコーヒーに出会ってきた。美味しいコーヒーはたくさんあったが残念ながらあまりよく覚えていない。美味しかったのは事実だが、心躍るものではなかったのかと今更に思い返している。しかし、かっこいいバリスタとの出会いは鮮明に記憶に残っている。とにかくコーヒーを楽しんでいるのだ。コーヒーを通して自己表現しているように見え、コーヒー1杯を抽出するまでも期待させてくれる。

たかが1杯のコーヒーであっても、飲み手にとっては特別な1杯になるものだ。それは尊い。
そう感じさせてくれるバリスタは本当にカッコいいのだ。

ポートランドで出会ったバリスタは、最初はムスッとしていたが写真を撮って良いかと尋ねると歯に噛みながら快諾してくれ、そのまま使う豆の話をしてくれ、続けて豆の特徴やその豆を抽出するコツなどをジェスチャーを入れながら見せてくれる。私は日本でバリスタをしていると告げると、更にテンションが上がりコーヒートークに花が咲いた。私の語学能力など御構いなしだったが、不思議と伝わってくるし伝わるものだ。ただ、出来上がったエスプレッソは話に夢中になったため過抽出気味だったが私にとっては最高の1杯になっている。私は味を評価しに来たわけじゃない。彼が遠くからやってきた相手のために作ってくれたコーヒーなのだ。多少舞い上がった話になっているが、それはとても大切な要素だと考えている。彼は最後に私の名前を聞いて手を振り次のお客のコーヒーを作りに戻っていった。憧れるわ。

相手のことを考えてコーヒーを抽出し提供する難しさは、技術で計り知れない気持ちだったりするのだろう。そういう気持ちのやり取りに精一杯になれることは、なかなか出来ることではないんじゃないかな。また、そういうコーヒーにもなかなか出会えなかったりするし、タイミングもあるだろうと思う。自分の住む街にそんなバリスタがいるだけで、ほんの少し豊かな時間が過ごせると思う。そう在りたいと思っている。

そのためにも毎日のコーヒーの準備はしっかりと行いたい。
コーヒーの内々には様々な人たちの存在が見え隠れしているものなのだ。

それではまた。

アバター

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

エスプレッソとカレー

凝縮感と一体感かれこれずっとカレーを作り続けている。毎日のルーティンワークにすらなっている。スパイスの配合が面白い時期もあったが、そこでコーヒーに置き換えてみ…

  • 358 view

コロンビア気分

コーヒーを飲みたくなって大抵手が伸びるのはコロンビアだ。こればかりは20年近く変わっていない。どうしてか。自分でも分からないでいるが、コロンビアの持つ安心感の…

  • 220 view

ホタルカフェ@こおひい工房 珈音

新月の乱舞と満天の星空6月下旬から7月15日までの毎週土曜日は男鹿市の「こおひい工房 珈音」さんとホタルカフェでコラボでカフェをしている。もう7年目を一緒…

  • 425 view

雲の上の青い空

大地からと空から見ると出張があり東京へ出かけてきた。セミナーとSCAJへ行き見に詰まった時間を咀嚼し始めている。凝縮した2日間は、コーヒーと人、少しの辛い…

  • 289 view

北海道出張⑤

朝に目が醒めると枕元のノートに書き綴った数行の文章に目が止まり、その脇に小鳥の絵を描いてある。就寝前にまくらを抱きながら書いていたのだが言葉がまとまらず、つい…

  • 227 view