よく冷えた朝には

  1. DIARY
  2. 307 view

蛇口からお水が出なくなる

ここ数日間よく冷えた。-15度を下回った。
ストーブを焚いていてもいつもより寒いし、雪の上を歩くとキュッキュと鳴くのだからまるで北海道にいた頃を思い出した。朝、いつものようにコーヒーを飲もうとポットにお水を入れているときに蛇口から出るお水の勢いがどんどん無くなりピタリと止まってしまった。

水道屋さんに来てもらい応急処置はしてもらったもののお店の水道は復旧しない。どうやらお店に引いている水道管がむき出しのようで広い範囲で凍結しているのかも知れないとの事だった。見える範囲でお湯をかけてもらったりしたのだが一向に出ないまま3日が経った。昼間の気温が2度くらいで、夜にはまた-10度ほどになる。もし自分が日陰の缶の中にある氷であるならまず解けないだろうと想像に難くない。

放射冷却の夕方は本当に綺麗な空を見せてくれる。
いつも捻れば爽快に出てくれるお水はどれほど有難い物だったか。便利な世の中が当たり前になりつつ、捻ってもウンともスンとも言わぬ蛇口を睨みつつため息が漏れる。便利になると考えなくなるもんだ。不便になってどうしたものかと考えるようになる。便利さとはなんだろう?

近所のホームセンターで小さな温風ヒーターを購入し水道管のある床下へ設置してみた。
そして昨日の昼間は気温がぐんと上がった。夕方にお店の蛇口がポコポコと音を鳴らし始めた瞬間、飼い主が戻ってきた犬の如く駆けつける。

ただそれだけのこと。
水道からお水が出ただけでこんなにも嬉しいものか。この喜びは忘れてはいけないと思った。キンキンに冷えているお水で手を洗うと痺れるほど冷たい。でも嬉しいかった。いつもそこにあるものに支えられて生きているんだ。

お水が美味しい。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

不思議な小さな世界

エッセンスエッセンスが欠けてしまうと何か感触がないような感覚になる。そのエッセンスはどこなのか?何事にもどこかに隠れていたりするのだが、なかなか姿を現…

  • 379 view

磨くということ

技術を磨くことと自分を磨くこと焙煎で思うようにいかず悩ましい日々を過ごしていた頃があった。もちろん今だって上手く出来ないこともある。しかし今思えば、技術と…

  • 218 view

薔薇が咲いた

お店の玄関先に植えた小さな花の薔薇が今年はたくさん花芽を付けていたので数日の間はソワソワしている。困ったことに伸びてきた新芽はことごとく萎れてしまって、原因は…

  • 389 view

夏の通り道

お盆を越えて随分と涼しくなった。近くの水路にサンショウウオがたくさんいて驚いた。夏は通り過ぎていった様子もあるが、残暑はあるだろう。東北の暑くて短い夏も後…

  • 479 view

季節は巡り秋

虫の音が響く夜と潮騒夏が過ぎて秋がやってきた。夏は酷暑だった。夏の甲子園は103年ぶりの決勝進出だった。しかし決勝戦では大阪桐蔭に敗れてしまっ…

  • 409 view

もし子猫になった場合

足元に蜂が落ちていた。もう息絶え絶えに動かなくなっていて、ツンツンとしても微かに触覚が動いたような気がするくらいだった。ここで絶えるのも不憫と思い窓の外へ運び出す…

  • 294 view