蛇口からお水が出なくなる
ここ数日間よく冷えた。-15度を下回った。
ストーブを焚いていてもいつもより寒いし、雪の上を歩くとキュッキュと鳴くのだからまるで北海道にいた頃を思い出した。朝、いつものようにコーヒーを飲もうとポットにお水を入れているときに蛇口から出るお水の勢いがどんどん無くなりピタリと止まってしまった。
水道屋さんに来てもらい応急処置はしてもらったもののお店の水道は復旧しない。どうやらお店に引いている水道管がむき出しのようで広い範囲で凍結しているのかも知れないとの事だった。見える範囲でお湯をかけてもらったりしたのだが一向に出ないまま3日が経った。昼間の気温が2度くらいで、夜にはまた-10度ほどになる。もし自分が日陰の缶の中にある氷であるならまず解けないだろうと想像に難くない。
放射冷却の夕方は本当に綺麗な空を見せてくれる。
いつも捻れば爽快に出てくれるお水はどれほど有難い物だったか。便利な世の中が当たり前になりつつ、捻ってもウンともスンとも言わぬ蛇口を睨みつつため息が漏れる。便利になると考えなくなるもんだ。不便になってどうしたものかと考えるようになる。便利さとはなんだろう?
近所のホームセンターで小さな温風ヒーターを購入し水道管のある床下へ設置してみた。
そして昨日の昼間は気温がぐんと上がった。夕方にお店の蛇口がポコポコと音を鳴らし始めた瞬間、飼い主が戻ってきた犬の如く駆けつける。
ただそれだけのこと。
水道からお水が出ただけでこんなにも嬉しいものか。この喜びは忘れてはいけないと思った。キンキンに冷えているお水で手を洗うと痺れるほど冷たい。でも嬉しいかった。いつもそこにあるものに支えられて生きているんだ。
お水が美味しい。