春の匂いがしている

  1. DIARY
  2. 400 view

不安と期待を越えていく

高校を卒業して大学進学までの少しの間、友達の家へ毎日のように遊びに出かけてはギターを弾いていた思い出がある。特に上手いこともなく、あれを弾けるようになりたいとかこの曲が凄く良いなどと、他愛のない会話で大いに盛り上がっていた。お昼になれば友達のお母さんがお昼ご飯を作って出してくれた。母親がいなかったからそういうのが心底嬉しかった。

そんな気持ちと裏腹に進学するために北海道へ引っ越す準備が億劫だった。
部屋で使うものは現地で買おうとしたが、カーテンくらい買おうよと父親が急かしてくる。カーテンこそアパートの窓の寸法を測ってからの方がいいだろうとゴネてみたが大家さんからの封書にカーテンサイズが記載されていた。緑色の葉っぱの模様がついているのを買った記憶がある。

3月27日に秋田を出発し北海道へ発った。
青森港から苫小牧までフェリーで揺られている間に様々なことを思った。寂しさと不安と期待が入り混じる程に気分は複雑になっていた。

アパートへ着いて買い物を済ますと晩御飯を作ってみろと父親。
近所のスーパーで買い出しする。金銭感覚ないものだから叱られる。確か帆立貝と野菜を使って「野菜炒め」を作って記憶がある。

父親はそれを摘まみながらお酒を飲んでいる。
うまく会話が進まないまま「一人暮らしをするには自信がないんだけど」と言うと、

「がんばれ」

そう言ってあっという間に鼾をかいて寝てしまった。

「がんばれ」とはどんなものなのか。それ以来の毎年の抱負は「あきらめない」が続いている。

雪解けの季節、特に3月下旬はこれを思い出すのだ。

これから新生活をする方も多いかと思う、是非「がんばれ」でいってほしい。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

雪降る夜、コーヒーと石焼き芋

甘い香りは共通点だがこだわり抜いたものではなく、ごく普通の石焼き芋とコーヒーを両手に持って窓の外を眺めながらもぐもぐしている時に「甘い香りはどちらもあるけど、…

  • 865 view

草いきれの中にコーヒーを見つける

新豆の香りは鮮烈な初夏を感じる湯沢市の里山も初夏の雰囲気が漂ってきて春蝉の声が響くようになったが、それを掻き消すように草刈機のエンジンがなる。昨日は店…

  • 930 view

寝酒のコーヒー・ピノタージュ

VANZIJL COFFEE PINOTAGE 2013コオロギの鳴き声と言えばいいのか羽を擦る音と言えばいいのか気になって仕方がない。一昨日部下に聞かれて「…

  • 358 view

天をも焦がす音

菖蒲太鼓後三年 秋の陣 in 金澤 2017〜出陣前夜〜にてコーヒーを提供してきた。地元の若者中心が行動し作り上げた前夜祭はとてもエネルギーに満ちていて胸にず…

  • 219 view

抽出というのは何事にも通ずるか?

今日はコーヒー豆をできるだけ細かく挽いてドリップした。できるだけといってもエスプレッソ用までにはいかない程度に留める。単なる気分転換だ。抽出されたコーヒーは味…

  • 328 view

自分作りをしっかりと

過ごしやすくて結構なのだが少し肌寒い日が続いている。高い木の天辺から聞こえてくる美しく元気な声の主は誰だろうと気になったまま時間が過ぎた。お店の玄関先に植えた…

  • 349 view