1. DIARY
  2. 250 view

雨上がりの午後

カップの中にはコロンビアがなみなみと注がれている。
私にはまだ熱いからしばらく放置して、ちょうど良い温度になったら口にしようと楽しみにしていた。

風が強く吹きつけてきて雷が鳴り始めるとすぐに大粒の雨が激しく降ってきた。子猫のピノは驚いた様子で物陰に走っていってしばらく出てこなかった。強い雨音が室内に降ってくるようで初めは煩すぎたが、そのまましばらく聞き入ってしまった。そして先月四国で買った「美生柑(みうかん)」の皮を剥き、四国でのことを思い出しながらゆっくりと食べた。香りと味わいはグレープフルーツによく似ていて、それよりも甘く、苦味が弱く、皮も薄いので口の中いっぱいに果汁が広がっていく。

あまりに美味しいのもう1つ食べようかと思ったところで、どら焼きがあったことを思い出した。

ここ近年は「どら焼き」や「かりんとう」が好きでよく見つけては食べている。どら焼きは色々なところで食べた。取材先の車中や旅先の道端など、たまにバッグに1個は忍ばせていたりすることもある。

不意に訪れる些細な幸せのように、どら焼きは様々な景色を蘇らせてくれるのだから全く摩訶不思議な食べ物だと愛おしく思う。通りでドラえもんも好きなわけだ。納得。

「美生柑(みうかん)」のあとに「どら焼き」なので食べる順番はバッチリだったが、これが逆であれば美生柑のイメージもここまで良くなかっただろう。食べる順序ってやっぱりあるもんだと色々と想像を巡らした。学生の頃、安いステーキ屋さんでステーキを頼んだ際にアイスクリームを続けて頼んだ時、先にアイスクリームが配膳された時は絶句した。そんなことまで思い出していた。

ところで、カップの中のコロンビアはどうなったのか?と記憶力のいい人もいるかも知れないが、ここまで思い出に浸っているとすっかり冷めているもんだよ。そんな贅沢な定休日の午後だった。

雨音はいつの間にか消え去り、湿気の含む空気が漂ってた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

自分作りをしっかりと

過ごしやすくて結構なのだが少し肌寒い日が続いている。高い木の天辺から聞こえてくる美しく元気な声の主は誰だろうと気になったまま時間が過ぎた。お店の玄関先に植えた…

  • 354 view

コーヒー生豆の香り

しっかりとしたフルーツ感焙煎後のコーヒー豆の香りは芳しく果実に例えられたりカカオを想起させたり色々とある。生豆の香りはというと、これも果実感が強いものから…

  • 2802 view

紛れこむものの作用

カエルの合唱が風に乗って聞こえてくる。そろそろ田圃に水が入る季節だと知れる。こういう里山の田舎では自然からたくさんの便りがある。今年も「アカショウビン」が来て…

  • 338 view

天をも焦がす音

菖蒲太鼓後三年 秋の陣 in 金澤 2017〜出陣前夜〜にてコーヒーを提供してきた。地元の若者中心が行動し作り上げた前夜祭はとてもエネルギーに満ちていて胸にず…

  • 231 view

gita Web Magazine はじめました。

はじめましてコーヒー豆を焙煎をして販売し始めたのが14年前、時間が経つのは早いものです。その頃はまだインターネット上で文章を書くことなんて想像してもいなかったので、今…

  • 638 view

なごり雪

春がやって来る窓の外を眺め「なごり雪か…」と店長が呟いた。先日までの陽気は失せて細かい雪が舞っている。冬の間は人の狡さと都合の良さを見たが胸に残る思いは少…

  • 446 view