蜃気楼のように湧き上がってきた時間

  1. DIARY
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朝から雨が降っていた。
昼頃には少しの間土砂降りになったが久しぶりに土の中まで潤ったんじゃないかな。午後には幾らか青空が見えてきたけれど澄んだ空気は冷たくなっていた。周囲の草木はぐんぐんと緑が濃くなりあっという間に背丈を伸ばしている。

昨年に植えた薔薇が一輪咲いていた。
雪が降る前に枝切りをしないとならないと思いつつも、そのままにして雪の下敷きになってしまっていたから、春になって新しい芽を付けている姿を見つけた時は嬉しかった。手入れなんて簡単に考えるもんじゃない。

父がコーヒーを1杯飲みたいとお店を訪ねてきた。
父に選んだのはミディアムハイローストのエチオピア。以前父は春蘭が好きだったので、甘酸っぱく優美な香りで野趣溢れるエチオピアはピッタリだと思い、何も言わずにそれを出したが、やはり何も言わず飲み干していた。

しかし問題はここからだ。歴史の話になった。
ちょっとした質問をしたら出るわ出るわ全く止む気配がしない。自分で聞いた質問は何だったのかと判らなくなる程、答えに纏わるその周辺の出来事を話している。日本史の教師をしていた父には久しぶりの授業のようなものだったのかも知れないが、楽しそうな顔をしているものだからそのままずっと聞いていた。

中学、高校の頃には日本史が嫌いだったのを思い出した。父は一生懸命に教えてくれるのだが、どうしても出来事に興味が持てなくて、「なぜ?その人はそう思って行動したのだろう?」かが気になってた。人の気持ちは歴史の教科書には書かれていなかったと思う。だから自分の知りたい答えは「その人物がなぜそうしたのか?という気持ち」であって、テストの答えは出来事中心や名称や年代など様々なものだから点数が取れるはずはなかった。
ま、頭に入らなかったのだね。

私「もし、その人物がこういうことをしていたらどうなったんだ?」

父「いや、そうじゃなくて、実際はこうだったわけよ」

私「それはさっき聞いたよ。そうではなくて、もし、こうだったらっていうことを知りたいわけなの。それに、どうしてそういうことをしたのか気持ちを知りたいね。」

父「それは、、もう、そうなれば分からん」

いつも話は全く歴史ではなくなる。書いてみると割と父も大変だと思った。

そんなことを思い出しながら聞いていた。
よく歴史は繰り返すというが、そうであれば尚更に中心人物のみならず、周辺人物までの心持を知っとくべきではないかと今でも捻くれてしまって頭に入ってこない。覚える気がないのか。。
まるで時間を遡った感じになり、その頃のことが蜃気楼の様に見えた時間だった。

それではまた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

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