甘酸っぱくジューシーなブラジルが飲みたくて焙煎する前に色々と考えた。
考えてばかりでも辿り着けないからと焙煎機に火を入れる。暖気運転している間に生豆をじっと見ていると、ブラジルで見た黄色い小鳥を思い出してしまった。
あの子はとても小さくてチョンチョンと飛び跳ねて近くまで来ては逃げていった。
前方では農園のことなどを色々と話している最中だったが、後ろでは黄色い小鳥が近づいては逃げるを繰り返していたから気が気ではない。どうしようもなく可愛いのだ。なぜ逃げる。そっと振り向くと飛び立つ姿勢でこちらを見ている。赤土を巻き上げながら乾いた熱風が走り抜けていっても、やっぱりあの子はそのまま日陰でこちらを見ていた。
そしてもう1羽がやってきたが、今度は少々青みがかっていて地味な感じの小鳥がその近くで飛び回っている。なんだかちょっと黄色い小鳥を取られた気分で寂しかった。
焙煎前の味わいのイメージは完全に黄色い小鳥に奪われた。
おかげで焙煎後の味見はほのぼのとして軽快な飲み心地となった。
コーヒーばかりを見ていたら世界は小さくなってしまう、もっと広大な世界へ飛び出さないと。
それではまた。