コーヒーに触れる

  1. COFFEE
  2. 136 view

スペシャルティコーヒーの楽しさ

日本を飛び出して外国へ行く。
それは遊びでも仕事でも知らないこと知る近道だ。知れば知るほどに、行けば行くほどに世界は広くなっていくから不思議だ。私にとってはコーヒーも一緒だ。今となっては様々な生産地を訪れ、その国々で出会うコーヒーや人々、景色や食べ物、文化などに触れてきた。長い間滞在こそしていないが、自分にとって新しい風に吹かれて空気を吸い込んで大きくなったつもりでいても、解らない事が増えてきている感じる気持ちが大きくなっている。皮肉なことに知るために出かけた先で「コーヒが解らない」が増えて「コーヒーは面白い」になっているのだ。
 
毎日コーヒー豆を焙煎し、コーヒーを淹れて味見をし、袋に詰めたりお客様に提供したりしながら思うことは少なくない。それは香りと味わいは品質管理であってそこが醍醐味にはしていないこと、コーヒーのストーリーは他にあって、そこをどうにかして届けたいという思い、もっと美味しく作れないかなと思うこと、届いたコーヒーを飲まれていい顔をしているお客様の妄想など全く尽きない。さて、先に書いた醍醐味にしていないと言うと誤解を招く恐れがあるので書き足すが、香りと味わいは私が全てを作れないからである。私とコーヒー豆の間には数千キロの距離があり彼の地で作られたものである。私にとっては焙煎は「再現性」なのだ。この作業はもちろん面白いのは言うまでもないがとっても自己陶酔に陥りやすい。

私にとって「再現性」と「美味しさを作る」はまた違う楽しみであり方向性も異なる。一人では美味しさは作れない。売り物を作るって難しいなといつも頭を抱える。考えては試してを、ひらめいては周囲を巻き込む、作っては溜息を漏らしたり、それらを繰り返す毎日が多い。現地でも同じように生育や精製に関して試行錯誤を繰り返していることもあると思う。しいて言うならカップなのかのコーヒーは合作だと考えたいのである。日本に届くまでの間コーヒー豆は多くの人の手に触れてくる。中には機械選別や手選別を掻い潜り見るも綺麗な生豆であるのに、どういうわけかポロっとこぼれ落ちて捨てられてしまうものだってある。無事にお客様のいいお顔を見れるコーヒー豆のことを考えると一生懸命に仕事といて迎えたいのである。コーヒーの仕事を選んだ自分には、時には自分のエゴを振り払ったり、または一歩踏み込んだりのモノづくりの現場だ。コーヒー豆の気持ちとお客様の気持ちに板挟みされた緊張感は自分の物語を生み出してくれる。コーヒーは本当に面白いものだ。

最近はコーヒーに何を教わったかなと考えることがある。
触れてみて初めて面白さが伝わる瞬間がある。人の温もりは血液の温度だけではなく心のこもった言葉や行動でも感じることがあるように、コーヒー豆も同じように接することで目に見えない表情を模索していける気がする。どこに触れるか、物言わぬモノだけにこちらの接し方で感触は大きく変化していく。そこで得た感触は美味しく飲んでもらえるコーヒー作りに役立つと思っている。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

ドリップする時の『蒸らし』について

粉全体が染み込むようにさて「蒸らし」についてだ。必要か不要かのことではないことを予めお断りしておく。ここでいう「蒸らし」というのは最初にお湯をかけ…

  • 606 view

ある日のコーヒーの香り

秋の夕暮れコーヒー日が暮れ始めると途端に寒くなってくる。あっという間に10度くらいまで下がりそろそろストーブの準備をしなくてはと思うこの頃だ。店内は焙煎機…

  • 277 view

月に照らされると見えてくるものたち

静かな夜エアコンは数日前から切っている。日差しも鈍く天気は残暑といった雰囲気もない。夏から秋へと季節は移ろいでいて近所のサクランボの葉っぱは黄色になり落ち…

  • 501 view

コーヒーの美味しさはどこにあるのか?

知識と技術だけでは手の届かない場所もあるコーヒーに限ったことでなく食べ物全般に言えることかも知れない。知識を高め技術を磨いても美味しさがどこに在るのか分か…

  • 137 view