雪解けの音を聞きながら焙煎して思い出したこと

  1. DIARY
  2. 475 view

純真無垢な妄想

子どもの頃にふと思ったことだ。
「もしかしたら立って両手で自分の足を持ち上げたら空中に浮けるかも知れない!」我ながらもの凄いひらめきだったと記憶している。しかし、腕力が未熟なために浮けないのかと落胆した。家に戻り父親にそのことを話すと苦笑いしていた表情を思い出す。大人になって力持ちになったら浮くことができると信じていた。今でも、もしかしたらなんてたまに考えたりするが、子どもの頃のあの無垢の心持ちがなかなか続かない。つまらない大人になってしまったのかも知れない。

窓を開けると春の匂いと雪が崩れ落ちる音が入り込んでくる。外の雪の塊はどんどん小さくなって土の見えるところでは草の芽が緑を覗かせている。雪解けでドロドロの大地が美しく思えるのは嬉しさをまとっているからだろう。ガチガチに冷えた世界に穏やかな雰囲気を感じる。最近の焙煎は美味しいシティローストを作れるように考えている。浅煎りにストイックに向き合っていたが、そのお陰か焙煎のメソッドにも変化が出てきた。しばらく技術へ目を向けてきたが素材や飲み手へよりシフトしていこうと思う。コーヒー豆のポテンシャルの引き出すことと、仕上げることの違いが朧げに見えてきた気もしている。

何にせよ春の陽光は心地よくていい。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

梅雨明け

いつの間にか7月が終わって、梅雨も明けていたようだ。日差しが強くてもカラカラとした天気で過ごしやすかった。いよいよ夏の真ん中に入ってきたのだけど、もう1ヶ月もした…

  • 228 view

言葉の彼方経験を積んだ、若しくは重ね上げた先に広がっていく末に描かれるものはいつだって尊く感じる。一瞬の情景が言葉に変換された時に人の想いが過っていく。素敵な…

  • 233 view

自分が住んでいる街について

人と街毎日コーヒーや写真やカレーを追いかけたり追われたりしているのだが、ふと自分はどこへ向かうのかと考えることはしばしばある。自分が育った街に戻ってき…

  • 363 view

屋根に雨音が響いている。しかし…

新型コロナウィルスは自分の首まで絞めさせるのか春先の景色にしては雪解けが早い。近くの側溝に流れる水の勢いは割と穏やかで緑が広がり始めた。賑やかだったフキノトウやフ…

  • 449 view

厄払いと同窓会

秋田では中学の同級生が集まり厄払いをしているのですが、これは珍しいとのこと子どもの頃からそういう風に見聞してきたので特に珍しいこともなく感じていたのだが、「厄…

  • 4788 view

トローリ

香りを探して、質感を探して、もう一度、もう一度。…

  • 545 view