不安と期待を越えていく
高校を卒業して大学進学までの少しの間、友達の家へ毎日のように遊びに出かけてはギターを弾いていた思い出がある。特に上手いこともなく、あれを弾けるようになりたいとかこの曲が凄く良いなどと、他愛のない会話で大いに盛り上がっていた。お昼になれば友達のお母さんがお昼ご飯を作って出してくれた。母親がいなかったからそういうのが心底嬉しかった。
そんな気持ちと裏腹に進学するために北海道へ引っ越す準備が億劫だった。
部屋で使うものは現地で買おうとしたが、カーテンくらい買おうよと父親が急かしてくる。カーテンこそアパートの窓の寸法を測ってからの方がいいだろうとゴネてみたが大家さんからの封書にカーテンサイズが記載されていた。緑色の葉っぱの模様がついているのを買った記憶がある。
3月27日に秋田を出発し北海道へ発った。
青森港から苫小牧までフェリーで揺られている間に様々なことを思った。寂しさと不安と期待が入り混じる程に気分は複雑になっていた。
アパートへ着いて買い物を済ますと晩御飯を作ってみろと父親。
近所のスーパーで買い出しする。金銭感覚ないものだから叱られる。確か帆立貝と野菜を使って「野菜炒め」を作って記憶がある。
父親はそれを摘まみながらお酒を飲んでいる。
うまく会話が進まないまま「一人暮らしをするには自信がないんだけど」と言うと、
「がんばれ」
そう言ってあっという間に鼾をかいて寝てしまった。
「がんばれ」とはどんなものなのか。それ以来の毎年の抱負は「あきらめない」が続いている。
雪解けの季節、特に3月下旬はこれを思い出すのだ。
これから新生活をする方も多いかと思う、是非「がんばれ」でいってほしい。