雨宿りとコールタール

  1. DIARY
  2. 1589 view

消えるものと残るもの

寒くなって雨音がぽつぽつと聞こえてきた。
もう半袖だけでは寒い気温になってきて、里山にも秋が迫って木々の葉も少し紅葉してきている。何かと忙しなく動いていると、ふとした時に目に止まるものは色艶やかだが、思い出すのはそれと裏腹に苦い思い出だったりする。

子どもの頃に外で遊ぼうとして雨が降ってきたので神社の屋根下で隠れるように遊んでいた時のこと。
神社の階段の脇に蓋に重石が置かれた感を見付けた。その蓋を外すと薬品臭のするドロドロの黒い液体が光って見えた。適当な長さの棒を見付けてかき混ぜると粘度の高い感触に好奇心を一層煽られた。ネバネバしてベタベタする黒い液体の正体がわからぬまま、棒切れの先から糸が垂れるように途切れず地面に滴った。子供心に真っ黒い蜂蜜のようなものだと喜んであちこちに擦り付けて遊んだ。

数日後、父親に呼ばれて叱られたのは言うまでもなく「あれはずっと消えないよ」と言われたことを今でもよく憶えている。
そして黒い蜂蜜の正体は「コールタール」と言うことも知った。

いつの間にかコールタールは無くなったのに今でもその跡は消えずに残っている。世の中には消したくても「消えないもの」が割とあるものだ。無理矢理に消したとしても、それは本人がそう思うだけで消えることはなく、単に忘れているだけか見ないふりをしているに過ぎない。そう言う意味で「忘れる」ことは便利だ。痛みは消えても傷は消えないのと似ているのかも知れない。

小雨の降る森の中は静かだった。
たまに近くでカケスが大きな声で鳴くのを聴き晩秋の気配を感じさせる。今年はドングリやブナの実がたくさん落ちている。ブナの実が豊作だと熊の食料も安定し、農作物への被害が少ないと聞くことがある。そうであって欲しいのだが。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

前進と後退

「働かないで生きていけないかなー」「無理でしょ?」黒田硫黄 茄子1巻 ランチボックスここ何日か、周りの人と話をしていると学校の卒業式やそれに伴う飲…

  • 818 view

いつか誰かの言葉が目覚める日

ハッとさせられる頭の片隅に置かれて埃を被っていたかのように、そういえばそんなこと話したなと思い出す。あの時話した中に印象に残っていた言葉の埃を払ってみる。シン…

  • 319 view

呼び声

声のする方へクンクン甘えた声がする。カプリは視力が悪くなってきた。耳も遠くなってきた。オンオンと元気に鳴いて私を呼び、お店のドアが開くとピョンピョ…

  • 422 view

散歩道を歩く音

目の奥に潜む美面白い話なんてものは早々に見当たらないので今日はこのままパソコンを閉じてしまおう、なんて思いながらもかれこれ2時間ほど経った。できることなら毎日記事…

  • 458 view

よく冷えた朝には

蛇口からお水が出なくなるここ数日間よく冷えた。-15度を下回った。ストーブを焚いていてもいつもより寒いし、雪の上を歩くとキュッキュと鳴くのだからまるで北海…

  • 324 view

コーヒーに触れる

スペシャルティコーヒーの楽しさ日本を飛び出して外国へ行く。それは遊びでも仕事でも知らないこと知る近道だ。知れば知るほどに、行けば行くほどに世界は広くなって…

  • 399 view