雨宿りとコールタール

  1. DIARY
  2. 616 view

消えるものと残るもの

寒くなって雨音がぽつぽつと聞こえてきた。
もう半袖だけでは寒い気温になってきて、里山にも秋が迫って木々の葉も少し紅葉してきている。何かと忙しなく動いていると、ふとした時に目に止まるものは色艶やかだが、思い出すのはそれと裏腹に苦い思い出だったりする。

子どもの頃に外で遊ぼうとして雨が降ってきたので神社の屋根下で隠れるように遊んでいた時のこと。
神社の階段の脇に蓋に重石が置かれた感を見付けた。その蓋を外すと薬品臭のするドロドロの黒い液体が光って見えた。適当な長さの棒を見付けてかき混ぜると粘度の高い感触に好奇心を一層煽られた。ネバネバしてベタベタする黒い液体の正体がわからぬまま、棒切れの先から糸が垂れるように途切れず地面に滴った。子供心に真っ黒い蜂蜜のようなものだと喜んであちこちに擦り付けて遊んだ。

数日後、父親に呼ばれて叱られたのは言うまでもなく「あれはずっと消えないよ」と言われたことを今でもよく憶えている。
そして黒い蜂蜜の正体は「コールタール」と言うことも知った。

いつの間にかコールタールは無くなったのに今でもその跡は消えずに残っている。世の中には消したくても「消えないもの」が割とあるものだ。無理矢理に消したとしても、それは本人がそう思うだけで消えることはなく、単に忘れているだけか見ないふりをしているに過ぎない。そう言う意味で「忘れる」ことは便利だ。痛みは消えても傷は消えないのと似ているのかも知れない。

小雨の降る森の中は静かだった。
たまに近くでカケスが大きな声で鳴くのを聴き晩秋の気配を感じさせる。今年はドングリやブナの実がたくさん落ちている。ブナの実が豊作だと熊の食料も安定し、農作物への被害が少ないと聞くことがある。そうであって欲しいのだが。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

梅雨時の散歩

6月12日より横手店を時間短縮で営業再開をした。何とか続けていられることに感謝しかない。新型コロナウィルスの第2波が来るのかどうなのか等、囁かれている中で不安…

  • 265 view

2022年もよろしくお願いいたします。

あっという間に過ぎたと言ってしまえば2021年は何もなかったように感じてしまうが、振り返ればこれまた多くの皆様に支えられて来たと心にズシっと重みを感じている。もうコロナ禍…

  • 163 view

水が流れる音に春を感じる

春の匂いを吸い込み思うこと雪解け水が激しく音を立てて側溝を流れている。その音を聞くと春だなと思うのだ。春の気配はしばらく前からあったのだが、ここしばらくは気温が下…

  • 348 view

秋模様

9月が過ぎる。そう思って慌てて書き始めるくらいならと、これでも少しは反省している。自分で決めて動くのだけど、その通りにならなさ過ぎてしまうと「やれない理由…

  • 324 view

スペシャルティコーヒー豆の焙煎は面白い

スペシャルティコーヒー豆が持つ個性を知る思い出コーヒー豆の焙煎はいつもワクワクする。学生の頃にコーヒー豆屋さんに買いに出かけ、カウンター前で豆のことを聞くのが好き…

  • 926 view

2019

年が明けて思うこと多し年が明けてお正月だ。それぞれに過ごす楽しいことも多い時期かも知れないな。私てきにはいつもと変わらないお正月になっている。コ…

  • 431 view