コーヒーの酸味は苦手と感じている方へ
コーヒーの酸味については様々な課題があると思われ、コーヒー豆を扱う上でも「酸味」へは背を向けられないくらい大切な要素の一つでもある。今やたくさんのコーヒー屋さんが増えて飽和状態の中、とても高品質なコーヒーが手軽に楽しめるようになり、また流行りありスタイルも様々でどれを選んだら良いのか悩ましくもあり、コーヒー文化は賑わいを見せている様子だ。
店頭でお客様とお話ししていると…
「コーヒーの酸味が苦手なんです」
「酸っぱくないコーヒーはありますか?」
このようなお声をよく聞くのだ。
決して悪いことではなくて、あくまで私自身の「課題」として受け止めている。
数年前に比べて、コーヒー豆の焙煎度合いは浅煎りになってきているのが現状だ。これはスペシャルティコーヒーが多く浸透してきていることもあるが、まだまだ売り手の主観的な感覚が大きいとも思う。それはコーヒー本来の持つ風味を再現したいという、その「本来の風味」に感動した箇所であると思う。私自身がそうであった。
なぜ浅煎りか?浅煎りは酸っぱいのか?
浅煎りというとお店により基準は異なると思うが、私自身が津々浦々歩き回ってみたところ「シナモンロースト〜ミディアムロースト」辺りかと思う。下記に一般的な焙煎度合の表を掲載したので参考程度に眺めて欲しい。
※スマホやタブレットではレイアウトが崩れて見えるかも知れないので、その際はご了承頂きたい。
1 | ライト | Light Roast | 香り・コクともに低く酸味が強い。あまり飲用には適さない。 |
2 | シナモン | Cinnamon Roast | 香りはまだ若干弱く酸味も強い。苦味とコクも弱い。 |
3 | ミディアム | Medium Roast | 適度な酸味と軽い苦味が出てくる。口当たりの優しいコーヒーになってくる。 |
4 | ハイ | High Roast | 酸味に適度に苦味が加わりバランスが良くなってくる。 |
5 | シティ | City Roast | 適度に酸味・苦味・コクのバランスが整う。ロースト香も増してくる。 |
6 | フルシティ | Fullcity Roast | 酸味は少なくなり苦味が増してくる。 |
7 | フレンチ | French Roast | 強い苦味とロースト香がある。深煎りの面白さもある。 |
8 | イタリアン | Italian Roast | 苦味は強く酸味はあまり感じられない。スモーキーな印象になる。 |
表に色をつけた箇所のように、ミディアムロースト〜シティロースト辺りが私が使っているコーヒー豆には最適なのではないかと考えている。しかし「酸味」に焦点を当てて考えるとまた違った趣向を求められている気がする。
【酸味=酸っぱい】から【酸味=爽やか、甘酸っぱい】へ
まだまだコーヒーの酸味に対して趣向を向けられない方も多いと思う。これは単純に好みの問題と割り切っても良いのだが、そうなるとコーヒーの面白味を欠いてしまうことがあるのでもう少し頑張って書いてみる。
コーヒーは果実の種であるので「何らかの酸」は含まれている。
「酸っぱ味」に関しては、誤認されていることが混ざって真実と思い込みがあるような気がしてならない。もはやコーヒーの酸味だけの独特の世界観を感じるくらいだ。
まず「コーヒーの酸味」を整理しながら書いていくと、
①「酸味」・・・爽やかな、甘酸っぱいなど
②「酸っぱい」・・・未成熟、発酵など
①は良質の場合においての感覚表現である。
②は未発達、変質においての感覚表現である。
良質なものであっても抽出後の経過時間により酸っぱ味を感じることは少なくない。また適切な焙煎をされていない場合にも②が表現されると思う。
コーヒー豆は多かれ少なかれ酸味成分が含まれていて、それらは焙煎度合いにより変化していく。一般的には先ほどの表のように浅煎りでは酸味が強い傾向で、深煎りになると酸味は弱まる。これだけでは浅煎りはやはり酸味が強いということで間違いではない。
しかしコーヒー豆に含まれている「酸味」には品質があるのだ。
飲み心地というか、口当たりというか、飲み込んだ後の引き際がとても綺麗な酸味がある。それはとても上品で私は美しさすら感じる。
酸っぱさがしばらくの間口の中で消えない余韻となっているものや、濃いめの抽出だと余計に重たさが目立ってしまうと飲み疲れてしまう。せっかく良い香りなのに好みから外れてしまう可能性が出来上がってしまう。本当にクリーンカップの評価の高い豆であれば濃度があっても酸がキツくても飲みにくさはない。
こうまでして尚、なぜ「浅煎り」なのか?
これはお店のこだわりと呼ばれているのかも知れないが、文頭近くで書いた特徴の再現性を重視しているために、またスペシャルティコーヒーの動向によるところもあるだろうと思う。この辺りは一概に答えはないと考えている。
コーヒーの酸味とのやり取りは今後も続くことだと思う。
楽しみ方を知ることや、アドバイスひとつで解決できることもあるが、何よりはお客様に寄り添う姿勢がコーヒーの酸味を和らげる一歩もあると考えている。
理屈よりも気持ちの方が嬉しいことは多い。
「なんだそれ?」と思うかも知れないが、コーヒーの酸味への苦手意識を変革することは簡単ではない。味覚だけの話なら回避策は多くあると思う。酸味の苦手な方は深煎りを選んだらいいのだ。でもそれを言いたい訳ではない。コーヒー生産地で出会った素晴らしい世界をお届けしたいと思い、瑞々しい酸味や綺麗な酸味を通り越してばかりはいられないのだ。
だからと言って、お店には浅煎りばかりではないのでご安心を。浅煎りにはコーヒーの醍醐味を感じやすい箇所があるのだ。それを最適にコントロールしていくと心地よいブレンドが生まれたり、深煎りの面白さが見えてきたりする。
それは一つの答えとしてではなく自然の恵みを享受することのようだ。