もし子猫になった場合

  1. DIARY
  2. 294 view

足元に蜂が落ちていた。

もう息絶え絶えに動かなくなっていて、ツンツンとしても微かに触覚が動いたような気がするくらいだった。ここで絶えるのも不憫と思い窓の外へ運び出すと、のそのそと動き始めたがどうにも動けないようだ。そこで甘いものを上げようとメープルシロップをキッチンペーパーに染み込ませてあげると蜂からストローのようなものが伸びてきてスイスイと舐め始めた。ゆっくり10分ほどそれを見ているうちにお腹がヒクヒクと動き始めて蜂らしくなってきた。何だか体毛もふわふわに息を吹き返したようにモコモコと膨らんだいるようにも見えた。

その後、毛繕いみたいに顔を拭いたり羽を伸ばしてみたりしている内に、その蜂はフワッと浮き飛んで行った。

よかった。

子供の頃からたくさん蜂に刺されてきた。
そして大人になるにつれて蜂に刺されるのが怖くなり、ついには嫌いになった。しかし、この蜂は多分、昨日エスプレッソのメッシュ合わせしていた時にコーヒー豆の辺りをぐるぐると偵察してた蜂に違いないと、少し大きさと色を覚えている。コーヒーの香りにつられて来たかと少しだけ可愛く思えていた。そんな蜂が元気になって本当によかった。

そう気分を良くしたところで、子猫のピノがご飯を済ませて振り向きざまに店長の足元に顔をこすると、店長は「かわいいな」と一言発し撫でていた。

「もしもだよ、俺が魔法にかけられ子猫になってしまったらどうする?撫でる?」そう聞くと、

「撫でません!」

聞く相手を間違えると急に寂しい気持ちになるもんだ。
人間は咄嗟の出来事に複雑な感情のもと生きているんだな。

それではまた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

紛れこむものの作用

カエルの合唱が風に乗って聞こえてくる。そろそろ田圃に水が入る季節だと知れる。こういう里山の田舎では自然からたくさんの便りがある。今年も「アカショウビン」が来て…

  • 338 view

雪とため息

先日、出張から戻ると雪が降り始めていた。毎年11月20日前後には初雪が降っている記憶がある。雪の降り始めには、いつも綺麗だなと眺めているのだけど、どん…

  • 397 view

トローリ

香りを探して、質感を探して、もう一度、もう一度。…

  • 568 view

吹く風

風は色々な香りを運んできてくれる4月に集中していた出張も無事に終えて戻ると秋田は梅や桜は満開のようだ。北海道では久しぶりの友人たちに囲まれ色々と刺激をもらった。学…

  • 377 view

屋根に雨音が響いている。しかし…

新型コロナウィルスは自分の首まで絞めさせるのか春先の景色にしては雪解けが早い。近くの側溝に流れる水の勢いは割と穏やかで緑が広がり始めた。賑やかだったフキノトウやフ…

  • 465 view