静岡県賀茂郡松崎町
静岡県伊豆半島の南西部、海岸沿いに位置する風光明媚な町、松崎町。
海水浴場や釣りが楽しめる漁港へは民宿からも歩いてすぐ着ける。後ろを振り返れば町の6割以上を占める山林が広がる。「日本で最も美しい村」連合に加盟したのは2013年。町中に残る風情あふれる「なまこ壁」の建造物、山の斜面に段々に広がる「石部の棚田」、国内の約7割のシェアを誇る「塩漬けの桜葉」、この3つが地域資源として登録されている。
松崎町が位置する西伊豆は、険しい地形とその起伏に富んだ標高差が特徴。東京から新幹線で約1時間。三島駅に到着したら車に乗り換え、松崎町を目指して走ること約2時間。山間部の激しいカーブを何度も抜けると、ガードレール越しに水平線がどこまでも続く穏やかな海が目の前に開けてくる。三方を山に囲まれた港町「松崎町」を知るには、徒歩での町歩きがおすすめ。海水浴場や松崎港を背に一歩、町中へ入るとひときわ目を引くのが「なまこ壁」と呼ばれる趣きある建造物だ。これは、瓦と漆喰で作られた壁塗りの様式のひとつで、白と黒のコントラストが印象的。漆喰の盛り上がる様が「なまこ」に似ていることから、そう名付けられた。この盛り上がり方が立派なほど、その家の財力を表すそうで、かつて廻船業などで財をなした商人たちが住んだ松崎町には、いたるところにこうした「なまこ壁」の建物が今も残る。そして、町の中心地区から車で15分ほど山の中に分け入ると、駿河湾と富士山を臨む山の斜面に広がるのが、「石部の棚田」。山肌に段々に連なる、幾何学模様のように広がる田んぼは、大小不揃いながらもそこに何か規則性を感じる。後世に残し伝えていきたい美しい原風景のひとつだ。
なまこ壁、石部の棚田に続く、地域資源の3つ目が「塩漬けの桜葉」。桜餅などに使われるこの桜葉の7割がここ、松崎町で栽培されており、日本一の桜葉生産地として、町の重要な地場産業を担っている。
海では海水浴や釣り、カヌーなどのマリンスポーツを楽しむ人々の姿が、そして山ではかつての古道を発掘、再生させ、マウンテンバイクで走り抜けるトレイルツアーが人気を呼んでいる。コンパクトな町にぎっしりと詰まった豊かな自然資源。大企業に頼らずとも、「松崎らしい」やり方で町は発展してきた。
ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地にも使われた景勝地、松崎町。海に沈む夕陽をずっと見ていても飽きないのは、この原風景が、我々のDNAに刻まれた遠い記憶を呼び覚ますからかもしれない。
先人の思いを受け継ぎ、棚田の復元で町おこし
石部の棚田
松崎町の地域資源の一つである「石部の棚田」。かつて中山間地域の水田として栄えた場所だが、今から十数年前、そこは雑草が生い茂り、荒れ果てた休耕田だった。地元有志の思いで復元作業が始まったのが平成12年のこと。先人の思いを受け継ぎ、町などの行政、多くのボランティアの力もあって見事に復元した。
「町を元気に、シニアを元気に」奮闘する「松崎の母」
企業組合 であい村「蔵くらら」
「町を元気にしたい」「高齢者を元気にしたい」という一人の女性の思いから始まった「蔵ら」。昼間はワンコインでおふくろの味が楽しめる「ひる膳」が人気だ。地元の人と観光客が交流できる「松崎町の憩いの場」として元気なシニアが活躍する店は、日々、賑やかな笑い声に包まれている。
千二百年前の古道を蘇らせた現代の「山伏」
山伏トレイルツアー・西伊豆古道再生プロジェクト代表 松本潤一郎さん
「旅」と「道」に惹かれ、10代の頃から世界を旅してきた松本さん。ヨコハマ生まれの彼が松崎町に移り住んで5年目。古道の再生というテーマのもと、その整備を通じて「松崎町=山伏トレイル」という新たなジャンルを開拓している。
海、山、豊かな自然を生かした松崎らしい町づくりを
松崎町 齋藤文彦 町長
松崎町が「日本で最も美しい村」連合に加盟したのが2013年。「花とロマンのふる里づくり」をキャッチコピーに、住民参加型の経済自立を目指した町づくりを行ってきた。齋藤文彦町長に、これまでの松崎、これからの松崎についてお話しを伺った。
文:高橋秀子 写真:田村寛維
上記の文章は、日本で最も美しい村 編集室のHPからの抜粋になります。同行取材にて撮影した写真枠を掲載しております。全文記事をご覧になる場合には、下記リンクをご参照ください。
日本で最も美しい村 編集室