自然豊かな思考
この日はとりあえず野付半島ネイチャーセンターへ向かうことにする。
トドワラやナラワラが広がる細長い半島で、規模としては日本最大の「砂嘴」となっている。
「砂嘴(さし)」と言うのは、湾口から鳥のクチバシのように延びた堤防上の砂の堆積のこと。ここはラムサール条約にも登録されていて水鳥を筆頭に多くの動植物たちの生活圏だ。
天気こそ今のところ晴れているが、予報では次第に崩れていくようで強い風が吹き付けていた。ハマナスやエゾノシシウドなどが咲き乱れ北海道の夏らしい風景が広がっていてなんとも懐かしい。また、衣替えをするように次から次へと花が咲き表情が変化する美しい半島だ。そんなところをゆっくりと歩くことにした。歩きながらコーヒーのことを考えるのだ。いつもと違う風景の中で考えるコーヒーのことは良い距離感を与えられたようで少し新鮮だった。ここには焙煎機やエスプレッソマシンもない。想像の中でコーヒーは無限に広がっていく。おかげで自分のコーヒーはまたアップデートできそうだ。
足元には毛虫が結構いるのが気になっていた。
草薮の隙間からここだと言わんばかりに遊歩道を懸命に横断してくるのだ。まさに命懸けなわけだが、毛虫の横断は花が美しいだとか、コーヒーがどうのこうの… 集中することを阻んでくる。しかし、自然豊かな場所に身を置くことはいつもと違う思考になってくるのが面白い。正解を求めがちな思考から、挑戦者的な気持ちが溢れ出てくるから不思議だ。それは自然というものがとてつもなく大きな存在であり、自分の立ち位置を報せてくれる「力」があるのだろう。
素敵な花々たちのあとは知床方面へ向かう。