デスクワークの密かな楽しみ

  1. DIARY
  2. 349 view

隣で店長が今日のメニューを書いていた。なかなかスラスラとペンが走らないようで考えあぐねているようだ。

時折空を見上げ、指の間に万年筆を挟みパタパタさせている。
それを眺めながらそろそろインクが飛び出してあちこちに飛び散らないかと密かに期待していた。

湯沢店のメニューは毎日手書きすることにしていて、そこに私が赤インクで補足したりしている。これが思いの外に評判だったりして、それを楽しみにしてご来店くださる方も増えた。
恥ずかしながら嬉しく思っている。

毎日書くともなれば、これはこれで大変そうでいつの間にか店長は落書き帳を持参し下書きまでしている。
スラスラと書き始めたかと思うと、自分が書いた字が読めなくなったといい、文字を書くという毎日のルーティンを楽しんでいるかにも感じる。書くということは、なかなかに思うようにいかないものだ。彼の中に新しい風穴が空き、清々しい空気が流れ込んでいるのだ。

未だ店長の万年筆からインクが飛び出さないのは幸いだが、12時オープンまでの締め切りが近いことを告げておいた。
限られた時間内で書き上げる原稿用紙1枚分の美しい文章、毎日が渾身の1枚となり増えていく。

いつの日かスラスラと書き綴る文豪店長の姿や、またはインクが飛び散る日などを楽しみにしている。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

吹く風

風は色々な香りを運んできてくれる4月に集中していた出張も無事に終えて戻ると秋田は梅や桜は満開のようだ。北海道では久しぶりの友人たちに囲まれ色々と刺激をもらった。学…

  • 390 view

昼間の薔薇

薔薇の香り本日はお昼過ぎから打ち合わせがあり出かけていた。打ち合わせ先の近所に素敵な感じに咲いているバラを見つけて嬉々とする。軒下の陰で少し枯れ始めている薔薇に近…

  • 304 view

『この世界の片隅に』

映画を観る時はいつもポップコーンとコーラだ。映画を観る時は映画に集中して何も食わず、何も飲まずという人もいるがわたしはだらしなくポリポ…

  • 302 view

自分作りをしっかりと

過ごしやすくて結構なのだが少し肌寒い日が続いている。高い木の天辺から聞こえてくる美しく元気な声の主は誰だろうと気になったまま時間が過ぎた。お店の玄関先に植えた…

  • 360 view