1. DIARY
  2. 240 view

雨上がりの午後

カップの中にはコロンビアがなみなみと注がれている。
私にはまだ熱いからしばらく放置して、ちょうど良い温度になったら口にしようと楽しみにしていた。

風が強く吹きつけてきて雷が鳴り始めるとすぐに大粒の雨が激しく降ってきた。子猫のピノは驚いた様子で物陰に走っていってしばらく出てこなかった。強い雨音が室内に降ってくるようで初めは煩すぎたが、そのまましばらく聞き入ってしまった。そして先月四国で買った「美生柑(みうかん)」の皮を剥き、四国でのことを思い出しながらゆっくりと食べた。香りと味わいはグレープフルーツによく似ていて、それよりも甘く、苦味が弱く、皮も薄いので口の中いっぱいに果汁が広がっていく。

あまりに美味しいのもう1つ食べようかと思ったところで、どら焼きがあったことを思い出した。

ここ近年は「どら焼き」や「かりんとう」が好きでよく見つけては食べている。どら焼きは色々なところで食べた。取材先の車中や旅先の道端など、たまにバッグに1個は忍ばせていたりすることもある。

不意に訪れる些細な幸せのように、どら焼きは様々な景色を蘇らせてくれるのだから全く摩訶不思議な食べ物だと愛おしく思う。通りでドラえもんも好きなわけだ。納得。

「美生柑(みうかん)」のあとに「どら焼き」なので食べる順番はバッチリだったが、これが逆であれば美生柑のイメージもここまで良くなかっただろう。食べる順序ってやっぱりあるもんだと色々と想像を巡らした。学生の頃、安いステーキ屋さんでステーキを頼んだ際にアイスクリームを続けて頼んだ時、先にアイスクリームが配膳された時は絶句した。そんなことまで思い出していた。

ところで、カップの中のコロンビアはどうなったのか?と記憶力のいい人もいるかも知れないが、ここまで思い出に浸っているとすっかり冷めているもんだよ。そんな贅沢な定休日の午後だった。

雨音はいつの間にか消え去り、湿気の含む空気が漂ってた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

春の匂いがしている

不安と期待を越えていく高校を卒業して大学進学までの少しの間、友達の家へ毎日のように遊びに出かけてはギターを弾いていた思い出がある。特に上手いこともなく、あれを弾けるよ…

  • 394 view

浮かんだ月

ノートに走り書きした文章を読み返して、はて何て書いたかな?と立ち止まる。読み返して思い出せないくらいの戯言だろうとそのまま通り過ぎ仕事を続けることにした。続けるこ…

  • 282 view

来年が幸運でありますように

フィードバックの仕方今年も例年通りにあっという間に年末になった。果たして「あっという間」が良いのか悪いのかは分からないが目紛しく走ってきたように感じている。日…

  • 179 view

考える時間

いつも同じでないことへの理解カップに入ったコーヒーや豆は見た目はなんでも同じように思われていることがまだまだ多いように思う。コンビニやスーパーのコーヒーや、近…

  • 482 view

携帯電話から解放された日

とにかく不便を感じる違和感ギリギリで新幹線に飛び乗り座席に座り一仕事しようとしたら携帯がうまく繋がらない。アレもコレも移動中に済ませようと車の運転中に段取りを考えてい…

  • 538 view

田圃の中で考えたクリエイティビティ

新しいものを生む想像力男鹿市五里合にある「こおひい工房 珈音」さんの田んぼで稲刈りをしてきた。6月下旬から7月下旬の頃に「蛍カフェ」のコラボレーション…

  • 353 view