もし子猫になった場合

  1. DIARY
  2. 252 view

足元に蜂が落ちていた。

もう息絶え絶えに動かなくなっていて、ツンツンとしても微かに触覚が動いたような気がするくらいだった。ここで絶えるのも不憫と思い窓の外へ運び出すと、のそのそと動き始めたがどうにも動けないようだ。そこで甘いものを上げようとメープルシロップをキッチンペーパーに染み込ませてあげると蜂からストローのようなものが伸びてきてスイスイと舐め始めた。ゆっくり10分ほどそれを見ているうちにお腹がヒクヒクと動き始めて蜂らしくなってきた。何だか体毛もふわふわに息を吹き返したようにモコモコと膨らんだいるようにも見えた。

その後、毛繕いみたいに顔を拭いたり羽を伸ばしてみたりしている内に、その蜂はフワッと浮き飛んで行った。

よかった。

子供の頃からたくさん蜂に刺されてきた。
そして大人になるにつれて蜂に刺されるのが怖くなり、ついには嫌いになった。しかし、この蜂は多分、昨日エスプレッソのメッシュ合わせしていた時にコーヒー豆の辺りをぐるぐると偵察してた蜂に違いないと、少し大きさと色を覚えている。コーヒーの香りにつられて来たかと少しだけ可愛く思えていた。そんな蜂が元気になって本当によかった。

そう気分を良くしたところで、子猫のピノがご飯を済ませて振り向きざまに店長の足元に顔をこすると、店長は「かわいいな」と一言発し撫でていた。

「もしもだよ、俺が魔法にかけられ子猫になってしまったらどうする?撫でる?」そう聞くと、

「撫でません!」

聞く相手を間違えると急に寂しい気持ちになるもんだ。
人間は咄嗟の出来事に複雑な感情のもと生きているんだな。

それではまた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

散歩道を歩く音

目の奥に潜む美面白い話なんてものは早々に見当たらないので今日はこのままパソコンを閉じてしまおう、なんて思いながらもかれこれ2時間ほど経った。できることなら毎日記事…

  • 382 view

ある日のコーヒーの香り

秋の夕暮れコーヒー日が暮れ始めると途端に寒くなってくる。あっという間に10度くらいまで下がりそろそろストーブの準備をしなくてはと思うこの頃だ。店内は焙煎機…

  • 360 view

外に出て飲むコーヒーが最高の季節だ

自分で飲むコーヒーは良い意味で適当に飲みたいと思うコーヒー豆をきっちり計って少し粗めに挽いてみる。挽き目はお好みでいい。今日はさらりと口溶けが良く軽や…

  • 325 view

季節は巡り秋

虫の音が響く夜と潮騒夏が過ぎて秋がやってきた。夏は酷暑だった。夏の甲子園は103年ぶりの決勝進出だった。しかし決勝戦では大阪桐蔭に敗れてしまっ…

  • 369 view

月に照らされると見えてくるものたち

静かな夜エアコンは数日前から切っている。日差しも鈍く天気は残暑といった雰囲気もない。夏から秋へと季節は移ろいでいて近所のサクランボの葉っぱは黄色になり落ち…

  • 1014 view

言葉の彼方経験を積んだ、若しくは重ね上げた先に広がっていく末に描かれるものはいつだって尊く感じる。一瞬の情景が言葉に変換された時に人の想いが過っていく。素敵な…

  • 216 view