花の漂う町
昼食を済ませすぐに取材を始める。
取材先へ挨拶を済ませると外に出て細い道路を歩いていく。この角を曲がるとどこへ出るのか分からないままに進んでいく。好奇心のアンテナを伸ばして散策していく。
吉野町役場秋雨編の小道が入り組んでいて良かった。何か気分の良いことがあったのか鼻歌交じりで自転車を漕ぐ男性と二度すれ違った。
散策途中に見つける花が陽に照らされて眩しい。歩き回っているとほんのり汗ばむ陽気だ。
手応えのあった撮影の後は安堵する。
良い写真とは何かといつも考えているが写真という制限に捕らわれていたくないと感じているところがある。
吉野山へ。
山の上は寒かった。しかし桜は散り際だ。
夕暮れ過ぎて気温はぐんぐん下がっていく。旅情溢れる町並みを暗くなるまで散策する。
桜の儚さは美しいと思う。
暗がりの桜は朝にはまた数を減らしているのだろうな。
一日中歩き回って冷えた体に暖かなうどんと柿の葉寿司が染み込んでくる。旨い。
取材の最中にすれ違う多くの人たちや風景が記憶に積み重なり、古くから連綿と続いてきた人と町並みにはめ込んでいく。そうすることで自分の中の白地図に色が塗られる感覚がある。言葉に宿る力強さや優しさは、その人の表情に似ている。ある時ふっとそういう素性が出現する時がある。それもまたファインダー越しの世界なのだろうな。