雪解けの音を聞きながら焙煎して思い出したこと

  1. DIARY
  2. 516 view

純真無垢な妄想

子どもの頃にふと思ったことだ。
「もしかしたら立って両手で自分の足を持ち上げたら空中に浮けるかも知れない!」我ながらもの凄いひらめきだったと記憶している。しかし、腕力が未熟なために浮けないのかと落胆した。家に戻り父親にそのことを話すと苦笑いしていた表情を思い出す。大人になって力持ちになったら浮くことができると信じていた。今でも、もしかしたらなんてたまに考えたりするが、子どもの頃のあの無垢の心持ちがなかなか続かない。つまらない大人になってしまったのかも知れない。

窓を開けると春の匂いと雪が崩れ落ちる音が入り込んでくる。外の雪の塊はどんどん小さくなって土の見えるところでは草の芽が緑を覗かせている。雪解けでドロドロの大地が美しく思えるのは嬉しさをまとっているからだろう。ガチガチに冷えた世界に穏やかな雰囲気を感じる。最近の焙煎は美味しいシティローストを作れるように考えている。浅煎りにストイックに向き合っていたが、そのお陰か焙煎のメソッドにも変化が出てきた。しばらく技術へ目を向けてきたが素材や飲み手へよりシフトしていこうと思う。コーヒー豆のポテンシャルの引き出すことと、仕上げることの違いが朧げに見えてきた気もしている。

何にせよ春の陽光は心地よくていい。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

小さな感触

一歩踏みしめるほんの小さな目標でも達成できたことによって嬉しさは桁違いに倍増する。「目標」はそんな効果もある。本日はそういう日だった。それが日ごと月ごとに…

  • 225 view

春よ来い

いつの間にか2月になっていたなんて言わない。年末からの大雪でどこもかしこも雪に埋もれてしまった感じの、記録的な、これぞ雪国といった風景の中での暮らしを振り返っ…

  • 429 view

寝酒のコーヒー・ピノタージュ

VANZIJL COFFEE PINOTAGE 2013コオロギの鳴き声と言えばいいのか羽を擦る音と言えばいいのか気になって仕方がない。一昨日部下に聞かれて「…

  • 367 view

天をも焦がす音

菖蒲太鼓後三年 秋の陣 in 金澤 2017〜出陣前夜〜にてコーヒーを提供してきた。地元の若者中心が行動し作り上げた前夜祭はとてもエネルギーに満ちていて胸にず…

  • 242 view

言葉の彼方経験を積んだ、若しくは重ね上げた先に広がっていく末に描かれるものはいつだって尊く感じる。一瞬の情景が言葉に変換された時に人の想いが過っていく。素敵な…

  • 238 view

夕焼け小焼け

空が桃色になる「夕焼け小焼け」の「小焼け」は北原白秋の造語だった可能性があると何かで読んだのを思い出した。写真では桃色と紫が強く写し出されたが、本当は…

  • 912 view