いつかの空、いつかのコーヒー

  1. COFFEE
  2. 456 view

燃えるような空はあっという間に燻んで冷めていった。
早くも10月は終盤を迎えてしまい、紅葉は里山までに降りてきた。こちらの記事の更新では、あれよこれよといい加減な言い訳をこぼしながら書こうか書くまいか悩んだフリを繰り返したに過ぎない。
更新しながらの反省はいつもながらになっている。

色々と試してみたいことが増えてきて時間割でも再考しようとノートに綴ると、確かにそれほど余裕がないことに気付き、気を取り直してコーヒーを啜りながら引き算をする。そうしている内に頭が整理されていきクリアになったところで思い出したのが、がむしゃらになって焙煎にのめり込んでいた頃のコーヒーの味だった。

開業当初の頃は美味しさの基準なんてどこにあるものやらと目的地も定まらないままに彷徨い歩いていた感があった。それでも彷徨い続けていると何かしらに出会うコーヒーや人たちがいて、ささやかだけど美味しさへの指標を積み上げてこられた気がしている。そんな方々で出会ったコーヒーの味わいのほとんどがコロンビアだった。うまく焙煎できなかったのもコロンビア、他のコーヒーは上手に焙煎ができたかと言うとそうでもないのだが、いつも何か引っかかってしまうのがコロンビアだったから、どこへ行っても頼むほとんどがコロンビアだった。

そんなコーヒーの味の集大成はどんなものだったか、結論から言えるほど軽いものではない。
噛み締めるほどに思い出が滲んできてしまう、香りを追いかけている内に夜明けが来てしまう。

つまりコーヒーには没頭できる入口が何処かに存在していると言い切ってしまおう。

それではまた。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

ある日の森

クマがやって来た早いもので9月も終わりかけになった。8月の暑さはお盆前からの長雨で穏やかになって夏は急に大人しくなっていった。それでも時折の晴れ間にはミンミン…

  • 463 view

ブラジルで見た黄色い小鳥

甘酸っぱくジューシーなブラジルが飲みたくて焙煎する前に色々と考えた。考えてばかりでも辿り着けないからと焙煎機に火を入れる。暖気運転している間に生豆をじっと見ていると、…

  • 347 view

春景色のゴールデンウィーク

GWも後半すっかり春景色に包まれた湯沢市もGWで帰省中の方々が多く訪れている。心なしかGWに桜は間に合ったものの散るのが早いかとも感じたが、この儚さも美し…

  • 817 view

甘酸っぱいエスプレッソ

吟味する素材の持ち味を知ること。それに尽きるところだが、それを知ろうとすると多方向からのアプローチは必要だ。カッピングから始まり、ドリップで抽出時間や温度、粒度を…

  • 462 view

エスプレッソの美味しさ、バリスタの謙虚さ

凝縮感をコントロールしていくエスプレッソを美味しく抽出するのは、そもそものところ「エスプレッソはどういうものなのか?」ということや「どういうエスプレッソを抽出…

  • 1355 view

なごり雪

春がやって来る窓の外を眺め「なごり雪か…」と店長が呟いた。先日までの陽気は失せて細かい雪が舞っている。冬の間は人の狡さと都合の良さを見たが胸に残る思いは少…

  • 447 view