雪解けの音を聞きながら焙煎して思い出したこと

  1. DIARY
  2. 515 view

純真無垢な妄想

子どもの頃にふと思ったことだ。
「もしかしたら立って両手で自分の足を持ち上げたら空中に浮けるかも知れない!」我ながらもの凄いひらめきだったと記憶している。しかし、腕力が未熟なために浮けないのかと落胆した。家に戻り父親にそのことを話すと苦笑いしていた表情を思い出す。大人になって力持ちになったら浮くことができると信じていた。今でも、もしかしたらなんてたまに考えたりするが、子どもの頃のあの無垢の心持ちがなかなか続かない。つまらない大人になってしまったのかも知れない。

窓を開けると春の匂いと雪が崩れ落ちる音が入り込んでくる。外の雪の塊はどんどん小さくなって土の見えるところでは草の芽が緑を覗かせている。雪解けでドロドロの大地が美しく思えるのは嬉しさをまとっているからだろう。ガチガチに冷えた世界に穏やかな雰囲気を感じる。最近の焙煎は美味しいシティローストを作れるように考えている。浅煎りにストイックに向き合っていたが、そのお陰か焙煎のメソッドにも変化が出てきた。しばらく技術へ目を向けてきたが素材や飲み手へよりシフトしていこうと思う。コーヒー豆のポテンシャルの引き出すことと、仕上げることの違いが朧げに見えてきた気もしている。

何にせよ春の陽光は心地よくていい。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

記事一覧

関連記事

書けないから、書く

お湯割と焼きめざし何か書こうと思いパソコンを開いてみたが、昼間に思い付いたことが夜になって思い返すと書くほどというか書きたいほどでもない。仕方なく熊本へ行った…

  • 190 view

浮かんだ月

ノートに走り書きした文章を読み返して、はて何て書いたかな?と立ち止まる。読み返して思い出せないくらいの戯言だろうとそのまま通り過ぎ仕事を続けることにした。続けるこ…

  • 292 view

言い訳の作られ方

煮詰まった。頭の中で描いては紙に書き出しを繰り返していた。書いているノートの上に子猫にしては大きくなったピノが寝そべったままノートを覆い尽くすほど伸びてこちら…

  • 439 view

夕方に春が待ち遠しい

数日前の夕方は久しぶりに綺麗に晴れて眩しい光を浴びることができた。この季節、日光の温かさはストーブよりも逞しく室内を温めるから好きだ。春が近づくのはなんとも嬉しい気持ちに…

  • 278 view

星空を撮影する時の大敵はズバリ蚊だ!

耳元で囁く蚊の声お盆を過ぎるとすっかり涼しくなった。毎年のことだがどうにも寂しくなる。これは勝手に感傷的になっているので主観的だが夏祭りも、お盆を境界線にして…

  • 606 view

もし子猫になった場合

足元に蜂が落ちていた。もう息絶え絶えに動かなくなっていて、ツンツンとしても微かに触覚が動いたような気がするくらいだった。ここで絶えるのも不憫と思い窓の外へ運び出す…

  • 294 view