スペシャルティコーヒーの抽出は臨機応変で、コーヒーの楽しさは倍増する

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懐の深いスペシャルティコーヒー豆

生産地へ行くとこんなに美しいコーヒーチェリーが待っているんだ。
初めて訪れた生産地はインドネシアのリントン地区だった。その後はグァテマラ、コスタリカ、コロンビア、ブラジル、そしてまたインドネシアへ行った。ニューヨークやポートランド、シアトル、バンクーバーへカフェ視察で足を伸ばした地点を繋いで少しばかりは線になった気もするが気のせいだろう。まだまだ世界は広い。もっともっとたくさんの国や地域へ訪れている方も多いなかで解ったようなことを言いたいのではない。

スペシャルティコーヒー豆には特徴的な香りが含まれていたり酸味の質感が素晴らしいものだ。しかしながら抽出されたコーヒーはおおかた「酸っぱい」と感じられる方も少なくない。酸っぱくないコーヒーを手っ取り早く届けるには深煎りにしてしまうことだ。酸味は柔らかくなり飲みやすいコーヒーになる。

しかし風や音も匂いも届けたいのだ

深煎りにすることは嫌いじゃない。
じんわりと甘苦な風味があって、ぽてっとしていて多少盛った表現だがココアのようにもなる。香りも浅煎りの時とは違って、カップを口元へ持ってくるたびにすんすんしたくなる芳香がある。
何というか愛くるしいコーヒーだ。

浅煎りにすると、それは途端に変化する。

例えるなら、車窓を流れる美しい景色をうっとりと静観している様相から一変し窓を開けて見る感じだ。風や匂い、音までもダイレクトに体で受けることができるのだ。そのくらいの違いがあると思っていい。これはその時の人を選ぶだろう。

風邪を引いている人なら寒くて困るだろうし、眠っている人であれば突然の突風や音で目を覚ましてしまうだろう。例えが飛躍し過ぎた感は否めないが、そういうことだ。

浅煎りにしたスペシャルティコーヒー豆は、それほどインパクトを持っている。そこに興味関心を持って接すると受け入れ態勢が出来るのだ。窓を開けると風で目がしばしばするが音や匂いは飛び込んできて鮮烈な印象を受けるはずだ。ただ予想を斜め上に行き過ぎて困惑してしまうこともあるがそれは失敗ではないから落ち着いてほしい。まずはその感触の中にほんの少しでも好印象なものがあったかということを見つけられたなら、深入りせず一旦引き返し反芻してみるとそのファーストインパクトを整理できる。

しかし「なぜ浅煎りにしたいのか?」と聞きたくなるかも知れないので、上手く答えるのは苦手だが頑張ってみる。

浅煎りにすることで、まずその特徴的な香りがある。そして酸味の質感だ。
深煎りにすることで鮮烈さは薄らいでしまう。特徴的な香りは変化するのだが悪くなるわけではない。ただ「この果実感」、いやもっと具体的に言えば、例えば良質なエチオピアのナチュラル精製された「ストロベリー感」やマンデリンの「マンゴー感」を体感してほしい!となってくるのだ。届けたい、体感してほしいという最初にこちら側でインパクトのあるものを提案したい一心だったりする。

尚且つその時の酸の質感を感じてもらいたいのだ。酸の質感は「酸っぱい」ではなく「果汁感」や「滑らかな舌触り」などを感じさせてくれる。深煎りにはその良さもあり、浅煎りにはそれに向かう良質な情報源が含まれているのだ。知ることでより深く遠くへ視線を向けられるようになっていくはずだ。それは飲み方にとどまらず、抽出方法の選択肢やヒントを得られるものだ。食べ物とのマリアージュさえ浮かんでくる。

とは言え、「酸味」のコントロールは必要かと思うのだ。
先に書いた車窓越しで見る景色と、窓を開けた時の、その時の気分や体調に合わせて窓の開閉を自由に選んで欲しい。その旨を伝えると作り手もしっかりサポートできるので遠慮しないでお気軽にお声がけして欲しい。

酸味のコントロールは焙煎度合を選んだりすることで比較的簡単に「酸っぱ味」を回避できる。抽出では抽出器具が様々にある中で試しながらコントロールしやすい方法を選んで欲しい。またご自分でハンドドリップしてみたい方がおられたら、結構アクセスが多い記事のリンクを下記に貼るので、そちらも参考になれば幸いだ。

個人的には、少しでも生産地での「風や音や匂い」を届けたいと思っている。

それが酸味なのかと聞かれたら、、どうしよう。

雪の中を窓開けて走るさ。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

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