畑の表層を張り巡らす蔓や根
先日のよく晴れた暑い日に目の前にある畑に行くと草が元気に生い茂っていた。
おばあちゃんがせっせと管理していた畑は、今は父が少しだけ気ままに野菜を育てている。使われていない場所は数種の草花が植えられていて夏から秋にかけて花を咲かすのが毎年のこと。おばあちゃんは今は施設に入居している。
子どもの頃に、おばあちゃんはA4ノートくらいの大きさのラジオを持ち麦わら帽子をかぶって毎日畑の草むしりや野菜の世話をしていた。ラジオから流れてくるのは素朴な声で話す男性の声や歌謡曲だった。
生い茂る草むらを眺める瞼裏にはそんな思い出がぶら下がってきた。
不意に草をむしり始めると様々な思い出が蘇ってきた。
学校から帰ってくると冷蔵庫にサイダーが冷えているから飲めとか、茶箪笥にもらったシュークリームがあるから食えだとか、色々と気にかけてくれていた。シュークリームは何度か駄目になっていた。その度にシュークリームは冷蔵庫に入れてよと思っていた。
一心に草をむしり続けていたら何かの花の苗が見えてきてその周りを綺麗に摘みながら草をより分けて綺麗にした。6畳くらいの広さを3時間くらいかかって草むしりしていた。汗だくになり蚊やブヨに好き放題刺されていた。
いつもであればこれくらいでいいやと思うところ、まだまだやらねばと思っていた。
不思議だ。
結局暗くなるまで草むしりを続けた。
翌日から仕事を終えて夕方から畑へ行き草むしりの続きをする。
今度は何かの太い根がたくさんあることに気付き、その根を伝うと蔓性の植物が広範囲で張り巡らされている。それを手で引っ張りながら抜く作業を続けたがかなりの手強さで太いので牛蒡くらいある。それを思いきり引っ張ると途中で根が切れて、自分の握ったままの拳が胸に食い込んで息が詰まった。痛さで悶絶した。
息をすると痛いし歩くと響くので、多分きっとそれは怪我をしたのかも知れない。
草むしりをした場所に新しく花を植えた。
夕方から暗くなるまで店長を扱き使って花を植えている。
少しずつ色づく畑を見て店長も嬉しそうだ。
地面に近い空間でおばあちゃんを感じることができて良かった。
短くなった草の上で飲むコーヒーが実に美味しい。