ハンドドリップの妙

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抽出技術だけではない

仕事柄やっぱりよく聞かれることは「おすすめのコーヒー豆は?」や「ハンドドリップのコツはあるの?」などが多い。
もちろん聞かれることにはしっかりと答えられるので、今更なことでも何でも聞いて欲しいと思う。おすすめのコーヒー豆については、その時々には旬の豆もあるし、入荷のタイミングによって様々だ。お店として今おすすめしているコーヒー豆は一定ではないのと、ご本人のお好みから逸れてしまうこともある。

さてハンドドリップについてのコツはというと、あまり期待しないで欲しい。冒頭から期待するなと書くのは気が引けてしまうが何かの助けになることもあると思うので書いておく。

様々な書籍などでハンドドリップのセオリーが書かれており、各お店の抽出方法などが写真付きで丁寧に解説され、また抽出時間などの抽出データもきちんと記述されており大変便利になってきている。それを真似てみてご自分の抽出方法を組み立てていくことである程度はお好みの味わいになると思うし、ある程度経験されている方であれば応用してコントロールしていく術を知っているので楽しくコーヒーと接しているのだろうと想像している。

まずハンドドリップの優れているのは狙った味わいを抽出できるという点だ。

しかし、これが心底深いことだと思っている。「何」を狙うのかという上で豆を知る必要がある。

そして、自分の好みの味わいや今欲しい味わいがあるということだ。

最低限にこれらがあるとコントロールの幅が一気に広がる。

抽出時間、豆量、挽き目、湯温、抽出量などなど。

ドリップが上手くできない原因はどこにあるのか、コーヒー豆はお好みに合っているのか、これを見つけられると景色が変わるようにコーヒーが楽しくなる。そもそも失敗の原因がわからない、失敗かどうかの判断ができない、などということもあると思うが。飲んでみて自分に合わない味わいは成功したとは思わなくても良いのではないかな。コーヒーは美味しく飲めなくちゃいけない、そういう前提で書いているので多少の角が立つような表現に感じてしまったら申し訳ないが悪意があるわけではないのでご容赦願いたい。

コーヒーに近づいていくのではなく、自分に合ったコーヒーにできるのがハンドドリップの優れている点でもあると思う。試しに浅煎りのコーヒー豆と深煎りのコーヒー豆を抽出時間を揃えて、1分、2分、3分と試して抽出してみて欲しい。

両方のコーヒー豆で、どれがお好みのレシピになるか大まかな判断ができると思う。この時の豆量や挽き目、抽出量はいつも通りで試して欲しい。どの抽出時間でも濃かったり薄かったりした場合には豆量の増減を変更してみるとまた印象が変化すると思う。

とりあえずは、豆量は味の厚みが変化する、挽き目は味の総量が変化するイメージ。

面倒だと一喝されたら2分で試して欲しい。それで酸っぱく感じたらもう少し深煎りのコーヒー豆を、苦く感じたら中煎りの豆を試して欲しい。何だかんだとしているうちにレシピの1つ2つができてしまう。コーヒーは難しく考えると敷居が上がってしまいがちで手が離れてしまう。

あ、最後にハンドドリップ時に使うコーヒー豆の中にとても香りの強い豆が入っていたり、もしくは好ましくない香りのする豆が入ってしまうことがある。それは見た目ではわからないこともある。100gの中に数粒あるならまだしも、10g程度の中に数粒あるのでは抽出したコーヒーの香りや味わいは言葉にならない違和感から、嘘だろ?と思うような感じになったりすることもなくはない。それは何粒か指で割って確認すると香りの違いが顕著にわかると思うので是非試して欲しいところでもある。その違いのある中で成功や失敗を判断するのは難しい判断だ。それを回避するとしたら、手っ取り早く全量粉に挽いてしっかりブレンドして均一化するのがいいのかも知れないが香りが飛んでしまいもったいない気もする。

私が強くいうことではないが、一喜一憂よりも一期一会を楽しんで欲しいと思う。

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

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