カッピングスプーン

  1. COFFEE
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コーヒー豆を知ること

仕事柄コーヒー豆について色々と聞かれることが多い。香りや味わいはもちろん、栽培のことや精製方法や生産地でのこと、また技術的なことも然り、色々と聞かれる。聞かれることは嫌ではないが、答えだけ聞くとそれっきりになってしまう。大凡が答えを求めているから仕方のないことなのかも知れない。それを嘆いているのではなくて、私も答えがあるならと探しているから複雑な心境にもなるのだ。明確な答えがあればそう伝えられるのだが、なかなかそう言い切ることは難しいことが殆どだし、近年に出版されているコーヒーの本などにも同じようなことが書かれている。さらに迷うのが、コーヒー屋さんごとに違う視点で答えられていることもあり実に悩ましい箇所だと思う。主観と客観の間を往来しているようだが、それだけ自由な飲み物だということはとても素敵なことだと思う。
 

私のカッピングスプーンは福井県にある「Enzo cafe」の西野さんから貰ったものだ。随分仲良くさせてもらっているコーヒー屋さんでコーヒー豆の生産地へ買い付けに行くのも一緒だ。徳島県にある「とよとみ珈琲」の豊富さんもその仲間であって3人で色々な場所へ訪れた旅仲間だ。お二人を引き合わせてくれたのが神戸にある「株式会社マツモトコーヒー」の松本さんだ。コーヒー屋を始めてコーヒーを知ろうとしたのは最初からではない。西野さんからカッピングスプーンを貰ってからいろいろな国々の色々な場所ででカッピングをしてきた。もちろん最初から何か分かったものではない。松本さんを、現地のカッパーさんたちを見よう見まねで追いかけるようにカップしていった。訓練のようなものだったかも知れない。
 
コーヒーを知るにはとにかく口に含んでいくことだ。出そうでなかなか止まってしまうクシャミのようで、それでもクシャミが出るまで続けるような作業が懐かしい。どれが正解なのか頭をよぎる不安は今は無くなった。カッピングして最初の一口で何かを感じ、その何かが見えるかまたは言葉に変換されるまでカップする。クシャミに例えると、紙縒りで鼻をコスコスとくすぐり続け、ようやくクシャミが出る感覚に近い。何を書いているのかさえ不安になるが。。そういう類のクシャミが出るとすっきりすると思うのだがね。ま、そういうことさ。
 
私の中のコーヒーはこのカッピングスプーンが教えてくれたことも含め、多くの人たちも関わってくれたおかげで育っているのだと改めて感じている。そんなカッピングスプーンを昨日のカッピングセミナー終了後に店舗に置き忘れてしまったのを夜中に気がついて不安になった。本日お昼過ぎに無事保護できて一安心。そして先日失くしてしまったキーホルダーも出てきて一安心。
 
先日に書いた記事で「浅煎りのコーヒー豆で美味しい抽出方法」が思いのほか反響があって驚いている。たくさんのメッセージやお問い合わせを頂いたので、せっかくなのでセミナーとして開催しようと思う。ご興味のある方は下記リンクからイベント詳細を確認できるので機会があればぜひご参加頂けたら幸いだ。

浅煎りコーヒー豆の抽出方法 Vol.1

ただ上記のセミナーは私の主観的な内容も強く、正解を目指す方向ではなく実験的な内容でコーヒーを一緒に楽しんでもらいたいという気持ちがある。これが正解だということを求めてる方にはもしかしたら不向きかも知れないので予めご容赦願いたい。多少なり弱気になっているのは、こういうセミナーは単純に怖いからだ。でもコーヒーは楽しいのである!!

コーヒー豆の買い付けで海外へ行き、コーヒー豆の消費国と生産国で多くのバリスタと出会いコーヒーの世界観はまだまだ広がっていく。人の魅力はどこからやってくるのか、撮影の折にいつも思う。美しさとは何なのか、近年のテーマとなっている。旅はこれからだ。

caffe gita yuzawa / caffe gita yokote オーナー
株式会社 gita 代表取締役

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